絵のこと  1999.12のメモから転記

絵のこと

絵のことでいくつかご質問がありましたので、書いてみます。

絵を描いているときはとても気持ちがよいです。自然でストレスがない状態です。"真 地球の歴史"のような都市の風景画の場合、「この街角はどのようになっているのだろう?ここを曲がったらどんな生活があるのだろう」等と顕在意識で考えながら、手をちくちくと動かしていくのは例えようもなく楽しいです。まるで、自分が映画の観客にでもなったような気持ちで描いていくのです。苦労とは最も縁遠い世界です。

描くととても落ちつきますので、仕事の合間に気休めで描いています。絵を描いている状態の私が日常的に全部になれば、とても素晴らしい人間になるだろうなぁと思うときがあるくらいです。その他の絵についても、描くことそのものはいつも楽しいです。

最近は、墨絵を和紙に描く機会が多いです。風景画とは異なり、一瞬のうちに絵はできていきます。絵というより線や点と言うのが正確です。その線たちがなかなか語るのです。リトマス試験紙のようにその時の私の状態を記述してくれます。後から見るとさらに、良く分かります。一本の線や点にたくさんの物語があるような感じです。「あの時のこの線は迷っているよなぁ」とか「この線は意外に素直にひいているなぁ」とか分かるのです。絵を描くことは実に「生きること」に似ています。1998年の12月にスペース・サチで展示していただいた7点は私に絵の奥深さを教えてくれました。中にはたった2本の墨の線で描いた絵がありましたが、その割りにはとても饒舌です。たくさんのことを語り出して止まらないくらいの情報が入っているような感じです。自分で書くのもちょっと変ですが「すごい絵だなぁ」と思います。

墨絵の場合には和紙や筆、墨の濃さ、種類の組み合わせが無限にあります。きわめて限定されてはいますが、無限でもあります。単純だけれど、とても深いものがあります。まだまだいくらでも先がありそうです。少しずつ、千代大海ではありませんが「精進して」いこうと思っています。

最初のうちは「ただただ楽しい」時期があり、その後「何か違う」時期があり、さらに、奥行きの深さが見えてくる時期があるのかもしれません。いずれの時期も「楽しい」には違いがないのですが・・・。

最近、友人に頼まれて「私に合った絵を描いて」と言われて何枚か描きました。その時にははじめての紙でしたので、数十枚描いた後に「もうイイや。気楽にやろう」と思った瞬間に描けました。力が抜けた瞬間に何か力強くて楽しくてやさしい感じのものが描けたのです。

さて、色彩は不思議です。特に私自身が色弱のせいもあり、色については昔から考えることが多かったのです。色とは何だろう?と何度も不思議に思いました。色そのものに「性格」があるのではないか?と最近思います。人から見た相対的な色というのではなく、色そのものに何らかの本質的な豊かな個性が含まれているのではないか?と思っています。例えば「黄色」ならば黄色そのものにです。これは「宇宙に学ぶ」(森 眞由美さんの本)にもありましたね。

仕事場では、私はコンピュータを毎日使っています。コンピュータは手放せない道具です。特に三次元の空間を表現したり、考えたりするためにはとても便利な道具です。色を着けるという点でも素晴らしい道具です。私のような色弱でも「これは微妙な緑のはずだ」と数字を見れば推測できるから嬉しいです。私は緑と黄色の区別がつきにくいのです。特に、濃い緑と濃い茶色の区別が弱いです。ですから今までは「色に対してのコンプレックス」がありました。しかし、96年からコンピュータを使うことにより、間違いない色使いが「心の中」でできるようになりました。実際には鮮明には見えない違いも心の中では鮮明に違って「理解して」描いているのです。

図形のようなものもよく描きます。"真 地球の歴史"の最初の部分に出てくる図形のようなものです。これは、「何か手を動かしてイタズラがきをしたいなぁ」という感じです。電話を聞きながら自然に手が動いて何かを描くというのに似ています。自分の深い部分からの線であり絵であるようです。

(1)とにかく描く
(2)描いたものを素直に見てみる
(3)何かを感じる
(4)また描く
この繰り返しが私の場合には自然です。

絵から教えられるということはたびたびあります。でも、描いているときは「ただ、ただ描いている」という感じです。自分を高めようとか、「絵から教えられるような」良い絵を描こうと意識して描いた絵はとどうしても「線・点」から受ける感じが不自然になるようです。不思議ですが・・・。

おまけ
"真 地球の歴史"の文については私も良く理解できていません。あの絵が本に書かれていたように地下都市であるのかどうかも「何となくそうかもしれないし、違うかも知れない」という程度です。
 波動の法則のわかりやすさに較べると難解だという印象が私にはあります。波動の法則は今まで自分がぼんやりと感じていたことを明確に解析してあるような内容で、分かり易かったです。

次は、オブジェについて書いてみます。では。
1999.12月